新聞の挑戦

ロサンゼルスタイムズが、読者参加型社説ウェブサイト「Wikitorial」を3日間で閉鎖しました(CNETより)。スタート前からこうなることも想定の範囲内だったようですが、それにしても思い切ったことやるな、というのが正直な感想です。別のスタイルでの参加型もあったろうに…と思わないでもないのですが、これが「挑戦」であったことが、参加呼びかけのメッセージからも読み取れます。

「社説の論旨がばかばかしい? 事実を意図的に読み違えている? それとも詩情に乏しい? 『wiki』ウェブページを使って、あなた流に社説を書き直してみてはどうでしょう」「多くの懐疑的な人々が、本実験は失敗に終わると考えているようです。Los Angeles Timesは、まるでダンスフロアに躍り出た関節炎を患う老女のように、称賛の視線を集めるのではなく、腰骨を折ってしまうに違いないと彼らは言っています。確かにその可能性はあるでしょう。それでもわたしたちは、本プロジェクトを進めようと思っています」

たった3日間かもしれないし、閉鎖したことに対しての批判が集まるかもしれませんが、この勇気ある挑戦に敬意を表します。

日本では、とある地方紙の掲示板で、中傷の書き込みなどが数ヶ月間放置されたままになっています。私の周囲でも「新聞社の掲示板にこんなものを載せておくなんて」「即削除すべきだ」という声が大勢を占めます。しかし、同紙がその書き込みの存在を知りながら、これもひとつの意見だというスタンスであえて晒しているのであれば、それはそれで勇気ある挑戦だと思います。例えどんな書き込みであっても、市民の声に新聞社独自のフィルタをかけない、そんな勇気に敬意を表します。

ホームページをブログ化し、双方向をいち早く取り入れた神奈川新聞「カナロコ」。地域ニュースへのトラックバックやコメントは思ったほどついてはいなようですが、スタッフブログは盛り上がっているようです。タウン情報ブログにイベント紹介の記事を書いたのが、そのイベントが開催される百貨店の広報担当者だったとかで、同紙のスタンスに疑問を呈する声が書き込まれています。それに対し、カナロコ編集部は何度も続く書き込みに、一つずつ丁寧なコメントを返しています。新聞社がこれまで苦手としてきた(意図的に避けてきた?)読者とのOne-To-Oneの関係を24時間体制で実現している。その勇気とひたむきさに敬意を表します。

さあ新聞の次の一手は何なのでしょう。まずは、消費者志向を身につけ、価値観の押し売りをしないことから始めるべきなのかもしれません。上に書いた3つの挑戦は、その内容の是非は別としても、生活者の声を選り好みせずに聞くというスタンスに共通点があるようです。


6 Comments

  • わかばやしく

    2005 年 6 月 26 日

     仕事に汗するのは当たり前ですよね。
     
     最近、新しい取り組みに対する企画書に「それは効率的ではないぞ」、「大変ダロ」、「それで勝算あんのか」というコトバに少々ブチキレました。
     だったら今までと同じ内容で大勝利できるのでしょうかー。私はマッピラごめんです。

     でもはじめにやるのは本当に怖いし勇気がいる。だけどいっぱいの同志と「暗闇で手をつないで歩く」ことは自信をもって歩けるハズだと思っています。

     要領悪く、かっこ悪く、汗をいっぱいかきましょう。負けてもスッキリする高校球児の頃のように・・・。

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  • テサラック@管理人

    2005 年 6 月 27 日

    >わかばやしくさん
    コメントありがとうございます。
    今新聞に足りないものは、これまでの概念を打ち破る「勇気」だと思います。保身に走るのではなく、今こそ、要領悪く、かっこ悪く、汗をいっぱいかくべきなんですよね。勉強になります。

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  • 大ちゃん

    2005 年 7 月 7 日

    共感して読みました。
    新聞社が意図的に避けてきたこと―。
    現場で少しずつ、実践していきたいと思います。

  • テサラック@管理人

    2005 年 7 月 7 日

    >大ちゃんさん
    コメントありがとうございます。
    硬直化したモノを、現場から少しずつ変えていくことは本当に難しいし、骨の折れる作業です。でも積み重ねることによって何かが変われるかも…とまだ甘い期待を抱いています。

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