肩身の狭いマスメディア広告

もう既に、多くのブログで取り上げられているようなので、また出遅れですが…。
野村総研が「企業の広告・宣伝手法は、マスメディアから個別対応のITメディアへ 〜HDRユーザの過半数がテレビCM80%スキップ、今年の損失総額は約540億円に〜」というニュースリリースを出しています。

HDRユーザーがテレビCMをスキップしていることやPCインターネットの利用時間を64%の人が「増えた」と答えた結果には大いに頷けます。しかし、「このようなテレビCMスキップの常態化とPCインターネット接触時間の増加に対応して、企業はテレビCMをはじめとするマスメディアの広告価値を改めて考え直す必要がある」とまで言われると、少しだけ意地悪なことも言いたくなってしまいます。

まず、この調査がインターネット調査であること。極端な話、ネット調査で「あなたはネットを使っていますか」と聞けば100%が「はい」なわけです。しかしそのサンプルは消費者という母集団を代表してはいないのです。ここ数年の急速なネット普及によって、ネットサーベイの精度も随分高くなってきたことは事実ですが、質問内容によって回答が偏る傾向にあることは念頭に置くべきだと思います。

また、回答者の属性が示されていないことも残念です。20代を中心にした3000人と60代を中心にした3000人であれば、同じネットユーザーであっても随分回答は違ってくるはずです。おそらくバランスよくサンプリングしてあるとは思うのですが、その内訳を説明していただければ、リサーチ結果の読み解き方も少し変わってきたのかな、などと考えてしまいます。以前、野村総研のネットリサーチの結果公表には、回答者属性とネット調査が必ずしも母集団を代表していないことが書き添えられていたように記憶しているのですが…。

以前のエントリでも書いたことがあるのですが、こういったリリースの表題や内容は一人歩きをするものです。新聞やテレビも同じように「見出し」や「タイトル」の力だけで世論を誘導することがあります。だからこそ、調査で出た数字をテキスト化し報じる場合は、その調査のバックボーンをきちんと伝える丁寧さが必要だと思うのですが。いかがなものでしょうか。

散々強がってみせましたが「企業の広告・宣伝手法は、マスメディアから個別対応のITメディアへ」は、実際その通りでしょうね。もう信頼性だの詳報性だのに頼り切った広告スタイルには限界が来ているのです。確かに、強みを最大限に生かすのは重要なことですが、今は、弱みをどうやって補うかを考える事のほうが先決なのではないでしょうか。特に新聞広告は。


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