コミュニケーション・デザイン

佐藤尚之さんの「明日の広告」を遅ればせながら読みました。
「明日の・・・」というより、むしろ「真の広告」とは、こういうものだということを、実にわかりやすく、例え話を用いながら論じています。軽快で読みやすい文章でもあるし、既存の広告業界、メディアの関係者が、自らの仕事を振り返る材料として読んでみるのには最高の一冊だと思います。

この本の中で、佐藤さんが繰り返し用いられるキーワードの一つに「コミュニケーションデザイン」があります。私も、以前から多用するキーワードなのですが、その切り口が、広告の観点から見るのと、ウェブサービスの観点から考えるのでは、少し違ってくるなぁと思ったので、その辺りについて少し考えてみます。

結論からいうと、ウェブの進化で、コミュニケーションデザインは、広告からの切り口だけで語れなくなっているのだと思います。なぜなら、広告の表現手法の多様化と、ユーザー体験の多様化が複雑に絡み合って、「ここからが広告」という区別が曖昧になりつつあるからです。随分前に、「広告が広告でなくなる時」というエントリを書いたのですが、まさにその辺りの感覚が、顕著になってきたのではないかと思います。

一時は、私も、広告を広告らしくなく見せる工夫、例えばプロダクトプレースメントや、アドバゲーミングに注目したことがあります。また、テクノロジーを駆使した、コンテンツマッチや、ビヘイビアターゲティング(BT)などにも、大いに興味を持っています。これは、リーチを広げることや、CTRをあげるための手段だと考えれば確かに有効だと思います。しかしながら、広告を周囲に同化させ到達させるとか、ユーザーの属性に合わせて広告を投下するという、作り手、売り手側の論理が先行しすぎている感が否めないし、コミュニケーションデザインという切り口から見ると少しポイントがずれてしまうようにさえ思えます。必要な状況に、必要な広告(というよりメッセージ、情報)を投下するというか、需要と供給をマッチングさせるシチュエーションではありません。

これからの広告は、テクノロジーに後押しされて、さらに消費者からは「広告」と認識されないものに進化をつづけるのではないでしょうか。そして、既存広告の概念を超えたところで、新たなコミュニケーションデザインも生まれるのかもしれません