グーテンベルグからザッカーバーグまで

Adobe Omniture Summit2011での、ウォルトディズニー元CEO、アイズナー氏の基調講演内容が、Markezineでレポートされています。
グーテンベルグからザッカーバーグを経て、マーケターが主役の時代に 元ウォルト・ディズニーCEOが語るデジタル革命の本質(Markezine)

私も、情報革命の話をするときに、必ずグーテンベルグの活版印刷機は引き合いに出すのですが、アイズナー氏の「グーテンベルグからザッカーバーグ」というタイムラインの引き方のセンスが素晴らしいと思いました。

講演内容は、サイトをご覧いただければと思いますが、印象的だったフレーズをいくつかピックアップしておきます。

新しいものを受け入れつつ、古いものでも長続きするというバランスを考慮することも大切です

古いものが長続きするということではなく、タイムライン上での「バランス」が重要なのだということを再確認させられます。あらゆる事象がそうだと思いますが、何かが突然現れて、それまで存在していた何かにある時点を境に100%取って代わることはありません。スパンの長短はあるにせよ、その移り変わる入り交じった時期があるものです。その混沌とも言える事象を冷静に眺め分析することが大事なのだと思います。

余談ですが、「テサラック」とは、シェル・シルヴァスタインが、そんな混沌の時期を称した言葉なのです。

印刷機を発明したグーテンベルグからFacebookを創造したザッカーバーグまで、デリバリーシステムが多様な変貌を遂げてきた。新しいシステムが構築されるごとに、新たなユーザー体験は増してきた。

変わったのは、情報を運ぶシステムなのだけど、そこではなく「新たなユーザー体験」が生まれることにポイントを置くことの大切さを、改めて考えさせられます。

アイズナー氏は「コンテンツが一番重要」と主張する。いくら鮮明な画像であっても、番組の内容がつまらなければ誰も見ない。逆に「コンテンツが良ければ、提供することによって、他の展開に広がります」(アイズナー氏)

前職時代に、上司から、「新聞社がデジタルメディア展開を成功させるためには何に投資が必要か?」と問われたことがあります。私は、持論として常々語っていたので「記者教育でしょう」と迷わず答えました。そんなことを改めて思い出しました。

「新しいプラットフォームにはまりこんでしまいがちですが、見失わないことが大切です。現実ではライオンキングなど、昔読まれたものがデジタル技術の進化によりどんどん読まれているのです。今、一番読まれているものは『聖書』だということを忘れてはならない」

なるほど「見失わないこと」という一言には重みがあります。見失っているケースも多いのかもしれません。

「周りの雑音にまどわされることなく、マーケターは直接消費者の方々と向き合ってください。現在のすばらしいデジタル環境を、クリエイティビティーをもって活用し、最適な投資を実行していくべきです」

GoogleTenThingsにも書いてありますが、まずユーザーに焦点を、ということですね。当たり前のことなのですが、様々な企画を考える際に、新しいサービスや技術、デリバリーの仕組みに気を取られ、つい忘れがちになっていることを、改めて考えさせられました。