情報には向きがある

最近、地域情報化関連のイベント等でお話をさせていただく際、必ず「情報には向きがある」という話をするようにしています。一言で言うと、情報を消費する市場とターゲットを考えて情報発信をデザインしましょう、ということです。一見、至極当然のことなのですが、案外このデザインができていなくて情報の効果的なリーチが図れていないケースが多いように感じます。この部分の検証は、地域メディアの展開を考える上では、重要な要素になるのではないでしょうか。

インターネットを介さない旧来型メディアの場合、ローカルニュースや生活情報といった地域情報は、地元で収集、編集され、地域内で消費されることが多かったのではないでしょうか。それを、ウェブ上にそのまま展開し、これまでのターゲットコンシューマに到達させるというモデルも確かに手段としてはあってもいいし否定もしません。ただ、ウェブ上のローカル情報を地域内の人が探しているかというと、決してそうではないはずです。実際に、地方新聞社のウェブサイトを訪れる人の半数近くは県外からのアクセスですし、閉鎖性の高いコミュニティサイトでさえ、かなり多くの県外からの参加者がいたりします。当然、リアルな地域活動をベースにした地域SNSなどは、この限りではないとは思いますが、オープンなコンテンツほどこの傾向は強いのではないかと思います。

であれば、そういった新たなユーザ層を十分意識した上で、情報を展開する必要があるのではないでしょうか。
例えば、私が住む佐賀市のニュースや生活情報を発信しようとした場合、佐賀市内に住む人向け、佐賀市出身の方向け、これから佐賀市に住む人向け、佐賀市に仕事や観光で来る人向けなどで、消費される情報は全く違います。また、そのシチュエーションによって情報受信環境も違います。さらに、シチュエーション以外にも、ユーザのデモグラフィックによっても状況が変わってくるでしょう。この辺りの整理を上手くやった上で、情報発信をデザインする必要性を切に感じています。

そして、これは何も紙媒体とかデジタルメディアとかの手段や既存の枠組みで分けて考えるものでもなく、情報受信者(ユーザ)を起点として、リビルドしていくべきものなのではないかと思います。ただ前述の通り、まだ地域の情報は、デバイスやメディアの進化に伴った上手い整理ができていません。これを誰が担っていくのか、それが、これから地域メディア(広義でのメディアです)に求められるポイントなのではないでしょうか。