地方紙ビジネスがアブナイ

ネットと既存メディア(新聞)の融合について話をすると、「紙メディアはなくならない」と希望的観測で論じる人が私の身の回りにはたくさんいらっしゃいます。「テレビが出てきたときも大騒ぎをしたが結局は大丈夫だった」というセリフも飽きるくらいに聞いてきました。私も紙メディアが完全に姿を消すとは思いません。しかし、紙をベースにした新聞のビジネスモデルが崩壊するのではという危惧を抱いています。新聞読者がいなくなる、もしくは新聞がニッチメディアになるよりもはやく、読者がいるのに発行できない状況を迎えるのではと。

その要因のひとつが広告ではないでしょうか。広告の特性として、新聞広告は、信頼性が高く、詳細な情報を多くの人に伝えれることなどがあげられます。いくつか前のエントリにも書きましたが、以前ヤマト運輸が出したような意見広告や、速報性を駆使したニュースアドというスタイルも新聞との相性は比較的いいようです。

しかし、モノが売れるか、生活者の高いレスポンスが期待できるかというと疑問です。その明らかな原因のひとつは、ターゲット訴求力が欠落していることでしょう。強みを徹底的に磨き、弱みを補完するマーケティングのセオリーから考えると、ターゲット訴求力を強みとする広告メディアと連動し、クロスメディア効果を追求するしかありません。その高いポテンシャルを秘めているのがネット広告ではないでしょうか。

ただ、ナショナルスポンサーの中には、既に、ネット広告、ネットツール重視の方向性で走り出しているところも出てきています。日産自動車がプロモーションにブログを活用したことなどはその一例でしょう。さらには、ローカル広告を取り巻く環境も激変しつつあります。最近、GoogleローカルMSN電話帳goo地域情報強化など、大手ポータルのローカル情報強化が競うように発表されています。またYahoo!のローカルへのアプローチも見逃すことができません。もし、こういった生活に密着した身近な情報、役立つ情報を満載した魅力あるサイトが既存大手ポータル上に出現すれば、自ずとトラフィックが集まる。するとそこは広告媒体としての価値を持ち、ローカル情報の集積地としてローカル広告も集まってくるのは必然です。サイト運営のやり方しだいでは、徹底したセグメンテーション、ターゲッティングも可能になります。

そうなると何が起こるか。これまでローカルメディアに頼っていたローカル広告の流出が始まります。それも、空間や時間を買って、レスポンスを待つという、これまでのマス広告の概念ではなく、欲しがっている人に欲しい情報を提供する、場合によってはモノを売る、さらにはその履歴で徹底したマーケティングを行い、さらにオプティマイズされた情報として提供されるというサイクルが生じます。

だとすれば、新聞は、この八方塞の状況の中、広告とどう向き合っていけばよいのでしょうか。まずは、新聞広告(マスメディア広告)のポテンシャルを過大評価することなく、強みを再確認すること。次に、弱みを補うツールといち早く向き合い、自らその受け皿を創り出すこと。これに限るのではないでしょうか。すでに上記の大手ポータルはローカル広告市場に忍び寄っています。特に、gooは地域情報連動型のローカル広告サービスをはじめるし、バックボーンには電話帳で培った営業網も控えているわけです。

今、パラダイムシフトを進めることができなければ、新聞(特に地方紙)は広告から崩壊してしまうのかもしれません。余計な心配はしなくていい?そうですね、ほとんどの地方紙では既に迎撃体制が整っているとは思いますが…。


3 Comments

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  • 高田昌幸

    2005 年 8 月 15 日

    こんにちは。興味深く読みました。

    たぶん、ここしばらく、新聞はずっとこのエントリが指摘するところを行きつ戻りつしているのだと思います。回答はありそうだけれど、そこに飛び込む度量も無い、みたいな。編集も広告と同じでしょう。問題点はある程度認識できているのに、それを変えることへの意思が弱い。

    最近、私は組織が古びていることが最大の要因ではないか、と思うようになりました。とくに地方紙はその地方にとって「大企業」であることが多く、組織のありようや風土が相当に官僚化しているように思います。「官僚」とは、責任を取らない、決断しない、前例踏襲の代名詞ですもんね。

  • saygo@管理人

    2005 年 8 月 16 日

    高田さん、コメントありがとうございます。
    ほんとご指摘の通りだと思います。「変えることへの意思が弱い」「組織が古びている」「官僚化している」激しく共感します。だからこそ、内外から何と言われようが、地に足をつけ、それを突き崩そうとする力を育てなければならないのだと思います。私もまだまだ内側からの抵抗(悪あがき?)を続けてみるつもりです。

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