ローカルのラボラトリーとして

2009年頃から、前職の新聞社を辞めることを真面目に考え始め、色々な先達に相談をしていた。IT分野で仕事をしたい!という思いに変わりはなかったが、それが東京なのか、地元佐賀なのか正直なところ迷った。在京のIT企業数社からは、一緒にやりませんか?というお声かけをいただき、本気で単身で東京に乗り込もうかと考えたこともある。

しかしながら、九州で地域情報化の活動をする先輩方と話しているうちに、40歳近くまで九州で生きてきて、IT分野をやりたいから東京に行くと思っている自分に違和感を感じるようになった。

そこで決心したのが、地元佐賀での起業である。まだ地方創生がそれほど叫ばれている事もなかったし、マーケットは小さいし。とにかく不安だらけの創業だった。ただ、佐賀の会社でも全国初や世界初の価値を作り出すことは可能なわけで、その点だけはポリシーとして持ち続けようと思っていた。

2010年3月25日、登記した会社が株式会社ローカルメディアラボ。おかげさまで10年目を迎えた。この社名を考えるとき、まずは、「ローカル」にこだわり続けようと決意した。佐賀で仕事をすると言う意味ではなく、佐賀にいても都市部や海外と遜色なくITの仕事はやっていけるのだと証明して見せたかった。次に意識したのが「メディア」。新聞社で、新たな地域メディアの姿を思い描いていたが、なかなか実現できなかったジレンマを、ポジションを変えることで実現しようと思った。最後に「ラボ」。WEBサービスがいつまでもβ版であるように、会社も未完成の研究を続けていくイメージがあった。

10年目を迎え、この3つの想いが、まだ想い続けられていることを、最近ひょんなことから再確認することができた。

私は、東京(都市部)に司令塔がいて、佐賀(地方)に制作部隊がいればいいという考え方は好きになれない。人件費の安い地方にコールセンターが出来たようなパターンをIT分野でやる必要はないと思っている。ただそういう現実が横たわっているのも否定できないし、雇用を生んだり税収が上がったりすることのメリットも理解できる。でも、それを何とか越えていくためのブレイクスルーポイントを探り続けているし、これからの数年は、そこを強く意識して動いていきたい。

強がりかもしれないが、ローカルのラボラトリーであることを掲げた以上は、これにこだわり続けたいと思っている。